幻冬のルナパーク

再会

「久しぶり。待たせちゃった? ごめんね」



絵海はキャメル色のチェスターコートに黒いパンツ姿で、待ち合わせした横浜のダイニングバーに現れた。



仕事の時と同じく、髪を後ろで一本に束ねていた。ヘアゴムについたひし形の銀色の髪飾りが、闇夜に浮かぶ蝶のように怪しく光っている。





実家に戻って生活が落ち着いてから、私は震える手で絵海にメールを打った。



少し相談があるので会えませんか、と。



彼女からいいよと返事が来てから、私は無邪気な子供にキスされたような気持ちでこの日まで過ごした。





「いえ、私も今来たところです。今日は忙しいなか来てくれてありがとうございます」私が言った。







私たちは店の中に入り、店員に席に案内してもらった。



薄暗い店内には満月のように白くて丸い間接照明がいくつもぶら下がり、カウンターの横には蛇口を捻るとワインが出てくる大きな木の樽が置かれていた。





席に座って海鮮サラダや肉料理を注文し、絵海がアルコールを頼んだ。



「私はジントニックで。水上さんはどうする?」



「えーと……」



 私はメニューを見て適当に目に付いた写真を指した。



「この、青いので」



「ルナパークでございますね」



店員が言い、もう一度注文を確認してから戻っていった。
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