幻冬のルナパーク

心が痛いよ

「うん。それで、相談っていうのは?」



私はあらかじめ考えてきておいた内容を話した。



次は訪問看護で働こうと思っていて、もし絵海の知り合いでその経験のある人がいたら話を聞きたいという話だった。





「訪問ね、誰かいたかしら……」



絵海が考え込んで言った。



「私の知っている範囲だと思い当たらないわね。私の知り合いだと病院か施設勤務しかいないわね。



力になれなくてごめんね」



「いえいえ、いいんです。結局は、入ってみるしかないんですから。ありがとうございます」私が言った。



そのあとアボガドやサーモン、マグロなどを具にした巻き寿司を頼み、絵海はワインも頼んだ。



寿司を食べるとお腹がいっぱいになったので、私たちは店を出た。



夜の小道に消えていく絵海のうしろ姿を、見えなくなるまで見つめていた。



彼女の言葉のひとつひとつが、表情の一片一片が、まぶたの裏に焼き付いていた。





だけど彼女の眼差しは私ひとりに向けられるものではない。



明日になればその慈愛に満ちた眼差しは患者に向けられ、同僚に向けられ、いずれは恋人に向けられるのだ。



その現実が私の心の痛点を刺した。



口から漏れた白いため息が夜の闇に残り、やがて消えた。
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