幻冬のルナパーク

佐藤南斗(さとうみなと)

絵海と食事をしてから少し経ち、春に向かって日に日に陽射しが暖かみを増してくる頃、私は大学の二つ下の後輩である佐藤南斗さとうみなとに相談を持ちかけた。



彼は背丈は男性にしては少し小さめなのだが、大きな瞳に綺麗な二重まぶたをしたとても美形の男の子で、彼が大学に入学してきた頃なんかは美男子がいると学部内でちょっとした話題になるほどだった。



私たちは学年が違うので初めのうちは校舎の廊下ですれ違うくらいしか接点がなかったが、ちょうど私のアルバイトしている大学の近くの寿司のチェーン店に彼が後から入ってきて、一緒に働いているうちに仲良くなった。



彼は周囲の人や世の中を冷めた目で見ているようなところがあったが、私が同じ学科だと知ると途端に愛想がよくなり、試験前になるとよく相談を持ちかけてきた。そして過去問を渡したり効率よく点数を取る方法を教えているうちに親しくなり、私が大学の実習のためにアルバイトをやめるころにはメールアドレスまで交換していた。   



南斗君はそのルックスでよく学内の女の子にモテたのだが、どんなにかわいい女の子に告白されても付き合わなかった。



地元の静岡にとびきり可愛らしい彼女がいるとか、資産家の親が用意した同じく資産家の許嫁がいるなどのうわさが飛び交っていた。



そんな南斗君がある日、彼よりも少し背の高い男性と手をつないで街を歩いていたというニュースを学校で聞いた時は、私も他の女の子と同様に驚いた。



その噂はまるで渡り鳥のように学部内に広がり、やがて誰も彼に告白しなくなった。



代わりに静かに物陰から彼を見守る女性ファンが増えた。私は確信的なことは何も聞けないまま、アルバイト先で何も変わらずに友人関係を続け、バイト先を辞めた後も彼が卒業するまでは喫茶店などで試験のコツを教えていた。
< 17 / 24 >

この作品をシェア

pagetop