幻冬のルナパーク
築山(つきやま)
「それじゃ、お疲れ様でした」
その日の仕事を終えて制服から着替えた。
更衣室から出るとつい口から長いため息が漏れた。
「なんだ、大丈夫か?」
横のほうから軽い笑い声が聞こえた。
声のした方を振り向くと、ちょうど隣の男子更衣室から出てきたところの築山つきやまという同僚がいた。
髪は茶色で短く、少し細めの目に整った鼻と口をしている。
白いシャツに質のよさそうな茶色の上着をはおり、黒のパンツをはいていた。
「築山。おつかれさま」私が言った。
「おう。ずいぶん疲れてるみたいだな」彼が言った。「例の新しく入った患者だな」
「そうだね。当たり」
私たちは話しながら病院の階段を降りた。
秋の夕暮れの冷たい空気が踊り場に満ちていた。
「なあ、腹減ったからどっかで夕飯食べていかないか?」
職員玄関を出たところで築山がそう言ったので、近くにある回転寿司に寄って帰ることになった。
店に入り、カウンターに並んで座った。
「それで、小暮さんだっけか? あの人が入ってから、ずいぶん頻繁にナースコールが鳴るよな」
築山が苦笑しながら言った。
「夜勤帯でも問題になってたぞ。どうでもいいことで頻繁に呼ばれるって」
「そうなのよ。私もよほどのことがない限り押さないでくださいとは言ってるんだけど。でもいまいち話も通じないんだよね。認知症もあるんだろうね」
私が席に取り付けられたアイパッドで、サラダの注文を出しながら言った。
その日の仕事を終えて制服から着替えた。
更衣室から出るとつい口から長いため息が漏れた。
「なんだ、大丈夫か?」
横のほうから軽い笑い声が聞こえた。
声のした方を振り向くと、ちょうど隣の男子更衣室から出てきたところの築山つきやまという同僚がいた。
髪は茶色で短く、少し細めの目に整った鼻と口をしている。
白いシャツに質のよさそうな茶色の上着をはおり、黒のパンツをはいていた。
「築山。おつかれさま」私が言った。
「おう。ずいぶん疲れてるみたいだな」彼が言った。「例の新しく入った患者だな」
「そうだね。当たり」
私たちは話しながら病院の階段を降りた。
秋の夕暮れの冷たい空気が踊り場に満ちていた。
「なあ、腹減ったからどっかで夕飯食べていかないか?」
職員玄関を出たところで築山がそう言ったので、近くにある回転寿司に寄って帰ることになった。
店に入り、カウンターに並んで座った。
「それで、小暮さんだっけか? あの人が入ってから、ずいぶん頻繁にナースコールが鳴るよな」
築山が苦笑しながら言った。
「夜勤帯でも問題になってたぞ。どうでもいいことで頻繁に呼ばれるって」
「そうなのよ。私もよほどのことがない限り押さないでくださいとは言ってるんだけど。でもいまいち話も通じないんだよね。認知症もあるんだろうね」
私が席に取り付けられたアイパッドで、サラダの注文を出しながら言った。