幻冬のルナパーク

寿司屋で

「小暮さんにとってはテレビのチャンネルを変えるのも『余程のこと』なんだな」



「そうだね」私がため息をつきながら言った。



「ところで、テレビのチャンネルを変えるのは誰の仕事なのかな」



「ベテランの先輩方だったら『こんなことで呼ぶな!』って一蹴するだろうけどな」彼が笑って言った。



「俺たちには無理だよな。家族がそのへんの細かい世話をしに来てくれればいいけど」



「旦那さんは亡くなっていて、一人息子はここから離れた千葉の大学で研究員だって」



私は届いたブロッコリーとエビのサラダを食べながら言った。



「まあ、早めに施設に入所する方向でうちの相談員もケアマネと相談するだろうな」



築山が肉の乗ったお寿司を食べながら話す。



「本当に毎日疲れるね。ねえ、こんなこと同じ職場の同僚に聞くのもどうかと思うんだけど、築山はいつまで今の病院で働き続ける?」



私がウナギとキュウリの巻きずしを食べながら言った。



「え? 水上辞めるの?」彼が驚いた声色で言った。
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