大好きな幼なじみと秘密の関係はじめます


そんな今は帰りのHRの時間。

といっても、ただのHRじゃなくて。

今日はいつもより特別な日。

そして、ちょっぴり寂しい日でもある。



「市ヶ谷先生、ありがとうございました!」


クラス委員の清川くんが、代表となって教卓の前に立つ。

目の前には、市ヶ谷先生こと宙くんがいて。


「こちらこそありがとう」


そう言って宙くんが清川くんから受け取ったのは、大きな花束とクラスのみんなでメッセージを書いた色紙だ。

宙くんが教育実習生としてうちのクラスにやってきて約3週間、長いような短いような、不思議な時間だった。

それももう、今日でお終いになる。



「みんなのおかげでとっても素敵な日々を過ごせました」

「……っ」


ぺこりと深く下げられた頭。

優しい声が届いた瞬間、意図せず涙腺が緩んでしまった。


一生のお別れでもないのにね。

それでも、宙くんと一緒に過ごした時間は本当に楽しかったから。


──パチパチパチ。


……ほら、きっとみんなも私と同じ気持ち。

温かい拍手の音があまりも心地よくて、幸せの色を見ているような感覚になった。




──そうして宙くんとのお別れ会も終わり、先生の連絡の後帰る準備を済ませた時だった。

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