アラ還も、恋をするんです。
「紗依さんとの結婚の許しを戴けませんか」

克君は前置きもなく突然言った。
この場に俺がいても良いんだろうか。

「もう大人なんだし、許すも許さないもないよ。
自分の行動に責任持って、好きにすれば良い」

突き放している訳ではなく、信頼している、素敵な親子。
由佳の母の顔を見た。
ちゃんとお母さんの顔をしてる。

この幸せな場面にいられたことに感謝して、部外者ながらお祝いをしたくなった。

「喪中だから、結婚は秋にしようと思ってる。
ただ、今住んでる家を二世帯住宅にしたい
建て直したいの」と。
この親にしてこの子ありってやつね。

「とりあえず、婚約のお祝いしよ。それからの話は追々ね」と、とりあえずまとめてみたが。

ただまだ何か言いたげにしてる。
静かに見守っているととんでもないことを言い出した。

「匠先生、建て替えの間、母を預かってもらえませんか」

想定外の話がどんどんやってくる。

「追々ねって言ってたでしょ。
それに、もしそうなってもウイークリーマンションがあるし」

いや、由佳をウイークリーマンションなんかには住まわせない。

今度は、
「今日はお母さんと寝る」と言って、由佳のベッドに倒れ込んだ。


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