Bitter Love〜無愛想な上司を助けたら、なぜか溺愛生活始まりました〜
ぼーっとしていると、華が呼ばれ、嫌なら顔をしながら席を立つ。
私は、華を呼んだ声の主に気づいてドキッとした。
……けど。
なんだろう……胸が痛い。先生の噂話なんて知っていたし、信じていなかったのに。
無意識に先生に目を向けると、なぜかバッチリと目が合った。
「あっ……」
目が合うなんて思ってなくて、思わず目線を下げる。
すると、心臓がバクバクと激しく脈打っていたことに気づいた。心做しか呼吸も少し浅い。
私……先生のこと、好き、なのかな……。
……いやいや、ないよ。だってあの虹原先生だよ?
怖くて厳しいだけの、先生だよ?
違う。この気持ちは、絶対に違う。苦手な人なだけ。ただ単に、一夜限りの関係を持っただけの相手なんだから……。
「音川さん?」
「は、はい!」
「もうとっくに始業の時間よ。早く準備しなさい。ケア回るわよ」
ぎゅっとくちびるを噛み締めていると主任に声をかけられ、慌てて立ち上がる。