【完結】婚約破棄したら意地悪悪魔に目を付けられました!?(仮)
私はそう言われて、思わず「うるさいですよ」と片霧先生に告げる。
「ま、お前には医者の苦しみなんて、分からないだろうけどな」
「……分かりません」
「医者になってみりゃ分かる。……その医者としての苦しみがな」
医者としての……苦しみ?
「片霧先生は、どうして医者になったんですか……?」
私がそう聞くと、片霧先生は少しだけ苦しそうな顔をして「……大切な人を守りたいから、とでも言っとく」と私に告げる。
「大切な人を……守りたいから?」
その表情からは、片霧先生の顔が暗く感じた。
「大切な人を守りたいという気持ちだけじゃ……人は救えないってことだよ」
そこには、片霧先生の暗い過去があるように、私には見えた。
「片霧先生、過去に何か辛いことでも、あったんですか……?」
気になって問いかけてみると、片霧先生は「……お前には関係ない話だ」とだけ答えた。
「もし……話したくなったら、話していいですよ。 私がいつでも話、聞きますから」
「は? 変なヤツ……」
片霧先生が少しだけ微笑む姿を見て、私はなんだか心がキュッとなったような気がした。
「辛い時は、辛いって言っていいんですよ。片霧先生」
「……は?」
「なんてね。……すみません、生意気言って」
片霧先生は私の顔を見て、「もしかして、慰めてるつもりか?」と私に聞く。