【完結】婚約破棄したら意地悪悪魔に目を付けられました!?(仮)


「お湯沸かすから待ってろ」

「うん」

 片霧先生と付き合ってから、毎日は楽しく感じる。 片霧先生が忙しいのは分かっているけど、こうして会える時間が嬉しい。

 天才外科医という肩書きを背負う片霧先生にとって、手術は最高の選択だと言う。
 手術して完治すれば、今まで通りの生活が送れる。手術すれば、また美味しいものが食べられる。
 そういう思いが、片霧先生にとって大切なものなんだと思う。

「片霧先生、今日はどんな一日だった?」

「どんなって言われてもな……いつも通りだけど」

「私もいつも通りかな」

「そうか」

 まあでも、普通が一番だと思う。普通が一番楽しいし、楽だ。

「今日病院で聞いたよ。 今度難しい冠動脈のバイパス手術やるんだよね?」

「ああ、シュミレーションはバッチリだ」

 ケトルのお湯が沸いたので、カップ焼きそばにお湯を注ぎながら、片霧先生は答える。

「さすが天才外科医だね」

「……俺は天才なんかじゃない」

「え?」

 カップ焼きそばのお湯を待ちながら、片霧先生の話を聞く。

「俺は自分のことを天才だとは思ってない。 ただ、患者の命を助けたいっていう気持ちだけで動いてるだけだ。……患者一人に一人に向き合うのなんて、たかが知れてるしな」

 片霧先生がすごい人なのは、分かっている。だからこそ、尊敬しかない。

「片霧先生は、ずっとそのままでいてほしいな」

「え?」
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