隠れ御曹司の溺愛に身も心も包まれて

「相野さん、お疲れ様」
 自分の席でパソコンに向かっていると部長に声をかけられ立ち上がる。部長が直接話しかけてくるのはめずらしいことだ。
「例の企画が高評価だった。来春発売のゲームのパッケージもうちでやれるよう頑張ってほしい。なんせ世界的に有名なゲーム会社『パルティ』の案件だ。会社にとっても素晴らしいことだから期待しているよ」
「ありがとうございます。精一杯頑張らせていただきます」
「この仕事を取るとデザイナーとして大きく羽ばたいていけると思うぞ」
 去っていく部長に私は頭を深く下げた。
 ゲームのパッケージデザインを手がけるのは私にとっての大切な夢だ。昨年、病気で他界した親友の亜希子との約束だった。
 入院生活が暇すぎるという亜希子にゲームをプレゼントすると、かなり熱中してくれた。
『ゲームの世界を教えてくれてありがとう』
『私は詳しくないけどさ』
『真歩がパッケージをデザインしたゲーム、やってみたいなぁ』
『そうだね。頑張る』
『約束だよ』
 夢を叶える前に亜希子は亡くなってしまったが、今もきっと天国から見守ってくれているに違いない。
 気合いを入れて頑張ろうとした時、修一郎と目が合う。なぜか不機嫌そうだった。そして立ち上がり部署から出ていく。
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