隠れ御曹司の溺愛に身も心も包まれて
私がアルバイトをしていた時、自分らしくデザインの楽しさを伝えることができたから少年時代の岩本君の胸に届いたのだ。
このテーマに大切に胸に抱いて、今後も制作していきたい。
結局、私は朝までデザインを詰めていたのだった。
ほとんど眠ることができなかったけど、朝食に岩本君の特製ハニートーストを作ってもらったのでエネルギーが湧いてきた。
家を出て会社に向かって歩いていた。
一生懸命考えたアイディアは自分の分身と同じだ。それを自分が考えたかのように扱う修一郎の行動は許すことはできない。
出勤すると課長に本当のことを話そうと深呼吸し、彼もとへ向かう。
「おはようございます。課長にお話をしたいことがあるのですが、お時間いただけますか?」
不思議そうな顔をされたけど課長と私は打合せ室に入った。
「昨日の会議室で通った案なんですが、私のアイデアが盗まれたんです。本当は本日締め切りのコンペに出そうと思っていたものでした」
「何だって? なぜ昨日言わなかったんだ」
「あんな大勢の人の前では言えませんでした。私の言葉を信じてもらえないというのもあって怖かったんです。本当は最後まで黙ってよと思ったんですが私もそれなりに苦労してひねり出した案だったので」
課長は腕を組んで考えた顔をしている。
「しかし案が通ってしまったんだ。クライアントにも本日には企画書を出さなければならない……」
優秀なデザイナーは何人も在籍しているが、明日の企画書に間に合うような案を出すというのは至難の技だ。
「本当に時間がない。誰が嘘をついているかもわからない。盗んだアイディアが商品化になってしまったと後々知られてしまうと大変なことになる。上と相談する」
打合せ室を出ると岩本くんが心配そうにこちらを見ていた。どんな結果になるかまだわからないが、まずは話すことができてホッとしている。大切な自分の作品を守るために戦わなければならない。
しばらくして私と修一郎が課長から打ち合わせ室に呼び出しをされた。そこには部長まで座っていた。
「田辺君、単刀直入に聞くが素直に答えてほしい。昨日出してくれて通った案は相野さんのアイディアたったと聞いたが?」
驚いたような顔をした修一郎だったが、首かしげている。
「何の話ですか?」
しらばっくれるつもりでいるのだ。ここまで最低なことをする人とは思っていなかったので強い衝撃を受けてしまった。
「ちょっと待ってください。自分が疑われてるってことですか?」
修一郎は納得できないというように発言したのだ。
部長と課長は目を合わせて言葉に詰まっているようだった。
「どちらかが嘘をついていることになると思うが、問題のある作品であればクライアントに提出することはでない。急遽別案でいくことにする」
「待ってください。何でですか?」
「万が一のことがあったら困るからだよ。うちも大事なお客様の商品に傷をつけることができないからね」
「……そうですね。了解しました」
修一郎は怒りを飲み込むような顔をしていた。
部長と課長との話し合いはあっという間に終わり、部署内に急遽通達がされた。すると修一郎が近づいてきて私のことを思いっきり睨みつける。
「何か言いがかりでもあるのか?」
あえて周りに聞こえるかのような言い方だった。
「俺のことを陥れたい目的でもあるのかって聞いてるんだよ」
「違う、そんなわけないじゃない」
「せっかく考えて作ったデザインなんだ。俺が盗んだとでも言いたいのか?」
まるで私が嘘の告げ口でもしたというような口ぶりだ。今のやり取りを聞いている人たちは、私が悪者だと信じてしまうだろう。
岩本君が立ち上がって修一郎を睨みつけた。
「相野さんが悪者みたいな言い方をするのはいかがなものでしょうか?」
「新入社員のくせに生意気だ。この女に惚れてるのか?」
周りにいる社員も立ち上がって、険悪なムードを止めようとしている。
岩本君が味方してくれたのは嬉しかったけれど、変な噂を立てられたら困る。彼は将来の社長候補の人間なのだ。
「二人で休日も歩いているところを見たという人がいるんだぞ。好きな女を庇いたいのはわかるけど、罪をなすりつけるのはどうかと思う」
「ここの会社は恋愛禁止ではないと思いますが。しかし、プライベートのことを話す必要はないです」
「ったく、ふざけんな」
修一郎は大股で歩いて部署を出ていく。
勇気を出して話したことが正しかったのだろうか。今度こそ本当に私はこの会社にいられなくなってしまうかもしれない。
デザインの仕事だけは続けたいから、もし転職することになっても同じような仕事をしたい。
しかし、どうしてもコンペの夢は諦められなくて、徹夜で作ったものを提出した。
コンペには無事に応募することはできたが、社内ではまた最悪な噂が広まってしまった。
私がお手洗いにいることに気がつかず、好き勝手話しているのだ。
「問題ある社員の作品が選ばれるわけがないよね」
「たしかに!」
それは納得できる。心から残念でならないが諦める気持ちのほうが大きかった。
このテーマに大切に胸に抱いて、今後も制作していきたい。
結局、私は朝までデザインを詰めていたのだった。
ほとんど眠ることができなかったけど、朝食に岩本君の特製ハニートーストを作ってもらったのでエネルギーが湧いてきた。
家を出て会社に向かって歩いていた。
一生懸命考えたアイディアは自分の分身と同じだ。それを自分が考えたかのように扱う修一郎の行動は許すことはできない。
出勤すると課長に本当のことを話そうと深呼吸し、彼もとへ向かう。
「おはようございます。課長にお話をしたいことがあるのですが、お時間いただけますか?」
不思議そうな顔をされたけど課長と私は打合せ室に入った。
「昨日の会議室で通った案なんですが、私のアイデアが盗まれたんです。本当は本日締め切りのコンペに出そうと思っていたものでした」
「何だって? なぜ昨日言わなかったんだ」
「あんな大勢の人の前では言えませんでした。私の言葉を信じてもらえないというのもあって怖かったんです。本当は最後まで黙ってよと思ったんですが私もそれなりに苦労してひねり出した案だったので」
課長は腕を組んで考えた顔をしている。
「しかし案が通ってしまったんだ。クライアントにも本日には企画書を出さなければならない……」
優秀なデザイナーは何人も在籍しているが、明日の企画書に間に合うような案を出すというのは至難の技だ。
「本当に時間がない。誰が嘘をついているかもわからない。盗んだアイディアが商品化になってしまったと後々知られてしまうと大変なことになる。上と相談する」
打合せ室を出ると岩本くんが心配そうにこちらを見ていた。どんな結果になるかまだわからないが、まずは話すことができてホッとしている。大切な自分の作品を守るために戦わなければならない。
しばらくして私と修一郎が課長から打ち合わせ室に呼び出しをされた。そこには部長まで座っていた。
「田辺君、単刀直入に聞くが素直に答えてほしい。昨日出してくれて通った案は相野さんのアイディアたったと聞いたが?」
驚いたような顔をした修一郎だったが、首かしげている。
「何の話ですか?」
しらばっくれるつもりでいるのだ。ここまで最低なことをする人とは思っていなかったので強い衝撃を受けてしまった。
「ちょっと待ってください。自分が疑われてるってことですか?」
修一郎は納得できないというように発言したのだ。
部長と課長は目を合わせて言葉に詰まっているようだった。
「どちらかが嘘をついていることになると思うが、問題のある作品であればクライアントに提出することはでない。急遽別案でいくことにする」
「待ってください。何でですか?」
「万が一のことがあったら困るからだよ。うちも大事なお客様の商品に傷をつけることができないからね」
「……そうですね。了解しました」
修一郎は怒りを飲み込むような顔をしていた。
部長と課長との話し合いはあっという間に終わり、部署内に急遽通達がされた。すると修一郎が近づいてきて私のことを思いっきり睨みつける。
「何か言いがかりでもあるのか?」
あえて周りに聞こえるかのような言い方だった。
「俺のことを陥れたい目的でもあるのかって聞いてるんだよ」
「違う、そんなわけないじゃない」
「せっかく考えて作ったデザインなんだ。俺が盗んだとでも言いたいのか?」
まるで私が嘘の告げ口でもしたというような口ぶりだ。今のやり取りを聞いている人たちは、私が悪者だと信じてしまうだろう。
岩本君が立ち上がって修一郎を睨みつけた。
「相野さんが悪者みたいな言い方をするのはいかがなものでしょうか?」
「新入社員のくせに生意気だ。この女に惚れてるのか?」
周りにいる社員も立ち上がって、険悪なムードを止めようとしている。
岩本君が味方してくれたのは嬉しかったけれど、変な噂を立てられたら困る。彼は将来の社長候補の人間なのだ。
「二人で休日も歩いているところを見たという人がいるんだぞ。好きな女を庇いたいのはわかるけど、罪をなすりつけるのはどうかと思う」
「ここの会社は恋愛禁止ではないと思いますが。しかし、プライベートのことを話す必要はないです」
「ったく、ふざけんな」
修一郎は大股で歩いて部署を出ていく。
勇気を出して話したことが正しかったのだろうか。今度こそ本当に私はこの会社にいられなくなってしまうかもしれない。
デザインの仕事だけは続けたいから、もし転職することになっても同じような仕事をしたい。
しかし、どうしてもコンペの夢は諦められなくて、徹夜で作ったものを提出した。
コンペには無事に応募することはできたが、社内ではまた最悪な噂が広まってしまった。
私がお手洗いにいることに気がつかず、好き勝手話しているのだ。
「問題ある社員の作品が選ばれるわけがないよね」
「たしかに!」
それは納得できる。心から残念でならないが諦める気持ちのほうが大きかった。