隠れ御曹司の溺愛に身も心も包まれて

『ティーオーユーデザイン企画』のデザイン部に所属する私は、この会社で夢を追いかける二十七歳。一九〇〇年に創業した企業でデザイナーや写真家を中心に作った会社だった。
 それからだんだんと業種が広がっていき、広告代理店として成長し、現在では日本とアメリカに関連企業が五百あり、デジタル広告とパッケージデザインに力を入れている。
 私の部署にはデザイナーが二十人いて、その他に補佐的要員も含めると全員で三十人いる。
 私の恋人、田辺修一郎(たなべしゅういちろう)は大学時代からの付き合いだ。私と彼は芸術大学を出た。学んだことを活かせる会社に行きたいと話をして同じ会社を受け、二人ともまさかの内定だった。しかも同じ部署で働いている。
 入社当時はただの同期ということで話をしていたけれど、だんだんと知り合いが社内に増えていくと、同棲していることが知られてしまい今では公認の仲になっている。
 同棲のきっかけは、私の両親が旅行中に他界したことだ。
 一人っ子で孤独な私に優しくしてくれたのが修一郎だった。
 初めは彼の家にお邪魔していたがだんだん荷物が増えていって一緒に住むようになっていた。
 年齢的に結婚間近と言われているけど、ここ三年ほどキスやハグをしていない。休みの日も別々に過ごしている。
 私たちは本当に恋人という括りの中にいるのだろうか。もしかするとただの同居人になってしまったという可能性もありえる。でも本当のことを聞くのが怖くて私は何も言わずにただ一緒に過ごす日々。
 掃除、洗濯、食事の準備は、すべて私の役割だ。お互いに正社員で仕事で忙しいので、少しは分担してほしいが、彼には私が必要なんだと言い聞かせていた。
 ……やっぱり、最近、心から笑ってないかも。
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