隠れ御曹司の溺愛に身も心も包まれて
半年という月日は長いような、短かったような。仕事も順調で時間の経過が早く感じたのかもしれない。
四月の下旬になり、アメリカから岩本君が戻ってくる。
あれから社長と出くわすたびに微妙な空気が流れていたが、私は心から愛した人とこれからも一緒に過ごしていきたいと自分なりに決意をしているところだ。
空港の到着ロビーで待っていると、手を振りながら近づいてくる人の影が見える。岩本君だ。私は嬉しくなって走ってかけよった。
それと彼は両手を大きく開いて受け止めてくれる。
「ただいま」
「お帰りなさい」
「会いたかったです」
会えない間寂しいからと一度も泣くことはなかったけれど、一回りも二回りも成長して戻ってきたように見える。
身分を隠して新入社員として一緒に働いていた時とは別人のようだった。年下なのにかなり頼れる存在というオーラを感じる。
「真歩さん……」
「岩本君……」
「家に戻ってイチャイチャしましょう」
そう耳元で囁かれて私は恥ずかしいけれど、コクリと頷いた。
荷物がたくさんあったのでタクシーで岩本君のマンションに戻ってきた。
部屋に入ると同時に岩本くんにハグをされる。そして何度も何度も口づけを交わす。
「すみません。真歩さん不足だったんで」
少し落ち着きを取り戻した岩本君が顔を赤くしていた。
リビングに入ると、彼はポケットの中から小さな箱を出す。
「僕と結婚していただけませんか?」
ダイヤモンドの指輪はキラキラと輝いていた。断る理由なんてない。
「ありがとう。こちらこそよろしくお願いします」
大企業との御曹司との結婚は、そう簡単にはいかないかもしれない。でも二人の思い合う気持ちがまずは大切なのではないかと、プロポーズを受け止めることにした。
「父のことは絶対に説得します。幸せになりましょうね」
岩本君が力強く私のことを抱きしめてくれた。
「ずっと岩本君についていく」
「ええ。でもそろそろ名前で呼んでもらえると嬉しいのですが……」
「そうだったよね……」
恥ずかしくてたまらないけれど、期待に満ちた瞳をされるので私は大きく息を吸った。
「圭介君」
「…………うわぁ、たまらないですね」
名前を呼んだだけなのにこんなにも喜んでくれるなんて。彼の反応があまりにもかわいかったので私は満面の笑みを浮かべる。
「明日は社内の授賞式ですね」
「うん」
ゲームの流行がどんどんと広がっていき、明日昨年度の社長賞をもらうことができたのだ。
「ゆっくり、二人でお祝いしましょうね」
「楽しみにしてるね」