イケメン双子と、甘く激しい攻防線。
その夜は私はノンアルコールシャンパンを、綾乃さんは生ビールをそれぞれのグラスに注ぎ、乾杯した。


そして、今に至る。ここからが本当の問題と言ってもいいかもしれない。2人からの視線には憎しみと、失望感と、虚無感があった。

それがふわふわと漂って、私に伝わる。


「だから、ね。2人と私は、これから違う中学校に通うの。分かった?」


春休みは明日で終わり。だから、ここ最近2人は私と一緒に登校することをとても楽しみにしていたようで。


これは綾乃さんから聞かされたこと。お互い何とも言えない表情になった。そりゃあ、2人を騙した張本人なのだから当然か、と私は胸に渦巻く罪悪感を消すために納得した。


「ぼ、僕、今からでも東中受験する……っ!まだ間に合うよね?」


子犬のようにうるうるとした瞳を向けられて、私はうう、と唸りながらそれから目を逸らす。そんな光の後頭部を千隼がバシンッと強く叩いた。


「遅えわ阿呆。現実を見ろよ」


うんざりとした表情を湛える千隼。だけどそんな千隼からも、何か強い意志を感じて一瞬ゾワリと戦慄が背中を駆け抜けた。


「っ痛ぁい。もう、なんでそうやっていつも僕を叩くの!それ、千隼のダメな癖だよ!直したほうが良いよ!」


光は頭を押さえて、涙目で怒る。そりゃそうか、だって千隼、本当に強い力だったもんね。


「うるせえ。それ言うの何回目だよ」

「もう1万回は言ってきた!!」

「はっ、そんな馬鹿げた嘘つくな」


光は昔からこうやって千隼に虐められてきた。
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