夜の姫は、夜王子の夢を見る。
 ふっ、と笑いながらも、かああっと赤く染まっていくサラを見逃さずに。

 心の中で「好き。大好き」と呟いていた。

 ……ちょっとどころじゃない、結構気持ち悪い俺だった。

○o。.◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇.。o○

 その夜。

 俺は夢を見た。

 急にサラがしゃぼん玉に包まれ、雲の上まで浮かんでいき、落ちる夢。

 血の気が引く、リアルな夢。

 でも俺は咄嗟に翼を出し、羽ばたいた。

 サラを助けるためなら、何だってする。

 翼を出すことは学園内では禁止されているし、出すのには沢山の魔力が必要とされる。

 ペンダントの魔力。そして、自分の魔力の大半を削り、俺は大空を羽ばたいた。

 空気が薄くなっていく中、呼吸を荒くしながらサラを拾った。

「亜嵐、くん……?」

「サラ……っ」

 ぎゅうっと逃さないように抱き締めて、俺は唇にキスを落とす。

 真っ赤になっているサラも、超絶に可愛い。

 ―俺、マジでどんなときでも可愛いって思ってるんだよな。

 そんなとき、ぱっと思いついた閃き。

 心の声を、サラの心の声を聞いてみること。

『亜嵐くん、好き……っ』

 そんな、思いにもよらない、そして嬉しすぎる心の声に、俺は飛び跳ねるように喜んだ。

 が、そんなことは続かず、続々、邪魔者やらライバルやらがやって来る。

「サラっち⁉」

「サラっ」

「さっちゃん!」

 邪魔者、次々と。

 苛立ちが募る俺が、誰にも渡さないと言うようにサラを抱きしめると、サラはかああっと顔を赤くさせる。

 ぽぽぽっと効果音がつきそうなその林檎のような顔に、思わずふはっと吹き出した。

「顔真っ赤。俺以外に見せないで」

「あっ、亜嵐くんのせいでこうなってるのっ……!」

 また可愛いことを言うサラに、やはり俺の心臓は爆発寸前。

 ―あー、マジで可愛い。ずっと俺ん中に閉じ込めてたい……。

 本気で、そんなことを思っていたら。

 ふわり。

 またサラはしゃぼん玉に包まれて、俺の腕から離れて、しゃぼん玉はぱちんっと弾けて、雲の下へ落ちていく。

 俺もみんなも、真っ青になって翼を羽ばたかせて、サラを追いかけていった―。
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