夜の姫は、夜王子の夢を見る。

6.ハプニング

 ―……う、うーん……。

 私は、朝の教室にて、男子達の揉めごとに巻き込まれていた。

 原因は、私なのだが……。

「サラは俺のもんだっつってんだろ」

「あ? そんなの誰が決めた? 契約って言っても卒業してからが本当の婚約者となるだろう。お前、そんなことも知らないのか?」

「は?」

 ばちばちばちっと、亜嵐くんと夜冥くんの間で火花が散る。

 私の今の立ち位置は、なんでか亜嵐くんの腕の中であり。

 なぜそうなったのか、ときは数十分前に遡る。

 朝、私が教室に亜嵐くんと着くと。

 夜冥くんが挨拶をしてきて。

 私も挨拶を交わすと、なんでか亜嵐くんがぎゅうっと抱き締めてきて。

「他の男となんて喋るな」

 なんて言う亜嵐くんに、私はどきっとしてしまったのだけど。

 夜冥くんの怒りをそのとき買ったみたいで、今に至る。

 ―わっ、私が原因だとしたら、ちょっと罪悪感があるなあ……。

 苦笑を浮かべながらも、私は身長差で上目遣いでふたりを見上げた。

「ふ、ふたり共、そろそろやめないっ……?」

「「……っ!」」

 ふたりは目を見開いて、ふいっとそっぽを向いた。

 まるでシンクロ。

 私はそれが、まさか!と思いふたりの耳を見つめた。

 それは……やはり、赤い。

 照れているのだ。

 ……また、なぜかは分からないけれど。

「照れてる?」

「てっ、照れてない」

「照れてるわけ無い」

 最初に亜嵐くんが否定し、それに加えて夜冥くんが否定。

 でも、私には見えている。

 ―やっぱり、耳が真っ赤だもん! 照れてるよっ。

 悪戯心が働いた。

 こんな、いらないことにだけ、私の悪戯心は働く。

「ふふふっ、ふたり共、嘘吐くこと苦手なんだね!」

「「はっ、はあ?」」

 弱点を見つけたことに嬉しくて、にひにひっと悪戯っぽく笑う。

 そんな私に、ふたりはくすっと笑った。

 笑顔の連鎖、というものだ。

 私もふたりに連れられ、くすっと笑い合って。

 そんな微笑ましい光景が続いていた。

 ……のだが。

「ねえねえ、夜姫さん、ちょっと来てくれないっ?」

 可愛らしくその光景に割り込んで来たのは、マドンナでモデルも務めるクラスメイト、夜乃莉々花ちゃん。

 莉々花ちゃんがなんで私を呼び出したのかは知らないけれど、一旦ついて行ってみる。

「おい、サラ、何かあったら呼べよ」

「俺をな」
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