夜の姫は、夜王子の夢を見る。
 あっちゃんも海斗くんにすごい高いレストランとか、デザートを奢られているらしい。

 ―ふふっ、ふたりを見るのは、すごく微笑ましくて私、大好きなんだよなあ……いつか私も、あんなふたりみたいな恋愛をしてみたいよ。

 いつもいつも、そんなあっまあまなふたりを見て、微笑ましく羨ましく思っている。

 少女漫画をいつも読み、一人きゅんきゅんしている自称恋愛博士である私は、あっちゃんの恋愛相談に良く乗っていた。

『さっ、さっちゃん、海斗くんがさっき、頭をぽんぽんってしてくれたの!』

『ええっ、すごい進展だね! そこはもう、思いっきり自分から近づいちゃいなよ! ついでにデートにも誘っちゃって!』

『無理だよっ、そんなこと……!』

『大丈夫! あっちゃんは可愛くて優しくて完璧な女の子だから、きっと海斗くんも好きになってるはずだよ! ほら、頑張って!』

『さ、さっちゃん……! ありがとう、私、頑張ってみるね!』

 なんて、告白の後押しをした私。

 その後ふたりは、やっぱり無事に付き合うことに成功した。

 ―さて……昔話をひっくり返すのはおしまいにして、早く投票しないと!

 私はステージの上に登っていき、投票箱に紙を入れる。

 それにしても、さっきから後ろのざわめきがうるさい。

「か、可愛らしい……守ってあげたくなるわ……」

「ああ、もう、可愛すぎる……天使みたい……」

「本当に私達と同じ吸血鬼なのかしら……」

 可愛い? 天使みたい?

 そんな意味不明な発言を私に向ける女の子達を振り向く。

 はて、と首を傾げて、すたすた席に戻った私に、あっちゃんはもうもう〜となぜか挑発してきた。

「全くもう、さっちゃんは人気が右肩上がりですね〜。いやはや、可愛すぎるんですよ、さっちゃんは」

「か、可愛い……? 私に可愛さなんて、欠片もないよ?」

「無自覚小悪魔めっ!」

 ―こっ、小悪魔⁉ 一応吸血鬼なのですがっ……。

 私の容姿なんて、ちょっと派手なだけ。

 ふつうだったら吸血鬼は漆黒のツヤがある髪に、血の紅い瞳。

 甘い甘い血を飲むごとに、瞳の紅は濃くなっていき、その吸血鬼の血も、どんどん甘くなっていく仕組み。

 私も、そうだ。

 けれど、みんなと違うところは、生まれたときからもう瞳の紅が最高潮になっていたこと。

 深い紅色に、染まっていたのだ。

 でも、血を飲むことを必要としているため、飲み続ける私の瞳は、どんどん紅く染まっていっている。
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