夜の姫は、夜王子の夢を見る。
 ぷくっと頬をふくらませる私に、またまた亜嵐くんは可愛いと呟く。

 ―ああもうっ、心臓が持たないよ……っ!

 翻弄されっ放しは悔しかったけど、それが私にとっての幸せだったから、えへへと笑った。

 そう……したら。

 私の体は、しゃぼん玉に包まれて、亜嵐くんの腕から離れて。

「さっちゃんっ⁉」

 あっちゃんの心配する声が、私の耳に届く。

 うるっと涙を浮かべ、しゃぼん玉の中で、ありがとうと精一杯、みんなにお礼を言って。

「じゃあ、ね……」

 悲しい別れを告げて、私の人生は終了した。

○o。.◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇.。o○

 かと思われた。

 ひゅーんと風の音を聞きながら落ちていくが、地面の硬さ、痛さは無い。

 ……永遠に。

 ―どうして、痛くないの……? もう地面のは、……ず。

 手には、生温い温度。

 そして、紅い……血。

 私は――莉々花ちゃんを、下敷きにしてしまった―。
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