夜の姫は、夜王子の夢を見る。
〜Episode2〜

番外編 ホワイトクリスマス

 吸血鬼が一番苦手な季節。

 それはもちろん日光が良く当たる夏。

 日光に当たっても大丈夫な分は大丈夫だが、嫌なものは嫌。

 けれど今は冬!

 寒い時期が好きな吸血鬼は、冬が一番好きなのだ。

 つまり一番活発になる。

 そして今日はクリスマス。

 今日はまるっきり全部友達や恋人と一緒に過ごそうと思っている。

 恋人っていうのは……亜嵐くんのこと。

 あの病院以来、本格的にお付き合いを始めた私達。

 未だにキス欲は解消されて無くて、最近では毎日のようにやっている。

「亜嵐くん、おはようっ」

「ん、おはよ」

 ぽすんと私の頭に手を乗せて、優しく撫でてくれる亜嵐くん。

 今は亜嵐くんの寮にお邪魔させてもらっていて、今日はずっとそこで過ごすつもり。

 ―楽しみっ……何をしようかなっ。

 わくわくと期待を膨らませながら一歩亜嵐くんのお家に入る。

 ふわりと魔界にしか咲かない花、弥生花の匂いが鼻をくすぐり、とてもいい気持ち。

「お、お邪魔します……っ」

 妙に緊張してしまった私は、ちょっぴり硬言で挨拶。

 すると亜嵐くんは、不思議そうに私の顎をくいっと上げて。

「なんでそんな緊張してるんだ?」

「ふぇっ……⁉ 亜嵐く、顔が近いよ……っ!」

「恋人なんだし、もっとサラの可愛い顔見たくて」

「かわっ……⁉」

 恋人同士になったから、亜嵐くんのそういう欲はちょっとでも和らげられたと思ったけど、私の勘違いだった。

 いつもいつも可愛いという単語で私を赤くさせる。

 少女漫画のような展開に、私はいつもどっきどきで。

 亜嵐くんは本当にかっこいいから、こんなことされたら困っちゃう。

 心臓が持たない。

 ―うーっ、亜嵐くん、意地悪だよ……。

 ぷくっと膨れながらもぴっしり靴を綺麗に合わせて、ふかふかのカーペットに足を踏み入れる。

「なんか、サラが家にいるって違和感あるな」

「えっ……い、嫌ってこと……?」

 悲しい。

 ふつうに。

 でもそれだったら今日、夜には鍋パーティーをみんなでやるので、私一人じゃあ嫌なら良いだろう。

 それにしても恋人だといつも言うくせ、そんなことを言うなんてとても悲しい。

「んーん、そうじゃない。サラがいると、なんていうか……来たこと無いから妙っていうか」

「そ、そういうこと……? 良かったあ……」

「やっぱ可愛い。好き」

 ―すっ……⁉

 またまた甘いセリフを吐く亜嵐くんに、かあっと顔を熱くさせる私。
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