夜の姫は、夜王子の夢を見る。
 みんなに精一杯の感謝を込めて、その言葉を放つ。

 ―な、なんかうるっと涙腺を刺激されちゃうな……あはは。

「じゃあ、私とひーちゃん、あっちゃんとゆっちゃんでお鍋作ってくるね! その間、席順とかゲームとかやっててね!」

「うん!」

「楽しみにしてる」

「サラの手作り、超楽しみ」

 みんなの期待で、料理のハードルが高くなっていっている。

 想像を超えるハードルの高さに、私はあははと苦笑い。

「が、頑張ろう……っ!」

「「「おー!」」」

 そして、女子四人による、波乱の手作り鍋が始まった。

 数分後。

「ふう……っ」

「完成したあっ!」

「おかわりも沢山あるし、男子達が食べてくれるでしょ!」

「う、うん、そうだけど……ちょっと、見た目が……」

「「「……ねえ……」」」

 出来上がった、鍋の仕上がり。

 星五まででつけるなら、きっとそれは三・五。

 ―ど、毒々しいっ……。

 真っ赤な汁に、それに浸かってちょっと赤みが足された鍋。

 美味しくは……なさそうだ。

「お、おまたせ……っ」

「お……」

「え?」

「これ、は……」

「あはは……と、特製お鍋……です」

 唐辛子でも入っているのだろうか。

 血のように真っ赤な汁は、作った私達本人でも食べたくなくなる。

「ど、どうぞ……遠慮なく食べちゃって……」

「おかわりも沢山あるからさっ!」

「食べてもらわないと困るんだよねー」

「あ、ああ……食うが……」

 ―た、食べたくないよね……でも、女子はそれ食べないんだよ。

 非常用に、私達にはオムライスが用意されている。

 鍋は男子に任せるのだ。

「いただき、ます……」

 日菜くんがまず人参を掬い、皿に入れ、ぱくっと一口。

「……ん! 美味い!」

「「「「えっ⁉」」」」

「ピリ辛だけど、すげえ美味い! 見た目はだめだめだけど、すごい!」

 美味しいらしい鍋を、うまうまと、ぱくぱくと食べ進める日菜くんを見て、他の男子もそろそろと食べ始める。

「本当だ、美味い」

「うん」

「そ、そうなの……?」

 ―男子達の明日のお腹が心配だよっ。

 でも、それに釣られて私も玉葱を一口。

 すると……。

「んっ、美味しい!」

「うんうん、見た目はだめだけど美味しいね!」

「私達天才⁉」

 ぱああっと、視界が明るくなっていった。

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