夜の姫は、夜王子の夢を見る。

3.特殊能力

 翌朝。

 ぴーぴーと魔界でしか生まれない鳥、ファリアンヌ・バードが鳴く。

 朝にファリアンヌの鳴き声を聞いたらその日一日幸せに過ごせるらしいけど、本当だろうか。

 ―んん……良く、寝たあ……。

 ふわあと欠伸をして、私は契約部屋のふかふかのベッドから起き上がる。

 隣ではまだ亜嵐くんがすやすや眠っている。

 それにしても、眠っている寝顔でさえかっこいいだなんて、ずるすぎだ。

 イケメンヴァンパイア、恐ろしや。

「さて……何しよっかな……」

 今自分の服を見たら、よれよれに垂れた乱れた制服だった。

 こんな格好、亜嵐くんに見られたくない。

 そう思った私は、爆速で更衣室の札を「使ってます」にしながら入ると、クローゼットの中に入っていた服に着替えた。

 可愛らしい、黒を基調としたプリーツスカートとブレザー。

 紅色のふわふわ大きいリボンを胸元にきゅっと付けて、リボンの留め具部分にペンダントの先をくっつけたら、完成だ。

 ―っていうか、ヴァンパイア学園の他のイケメンヴァンパイアって、誰なんだろう?

 私が知っているのは、亜嵐くんと海斗くんだけ。

 多分他のイケメンヴァンパイア達も御曹司でかっこいい人という予想はつくけれど、一応会ってみたい。

 でも、そのうちのふたりが新入生っていうことがすごいと思う。

 他はやはり先輩なのだろうか。

「ん、ああ……」

「亜嵐くん、起きたっ?」

「サラ、おはよ」

 亜嵐くんはのそのそと起きてくると、ゆったりと私の背中により掛かる。

 私の方が小さいから、ずしんっと体重を感じる。

 ……物理的に。

 ―そういえば、まだ聞いてなかったし今はましになってるけどなんで目の色があんなに薄かったのかなあ……?

 はて、首を傾げると、すぐ後ろから耳元に亜嵐くんの甘い声が直で脳に届く。

「何考えてんの?」

「ひゃあっ⁉ あっ、ああっ、あらっ、んくっ、えっ⁉」

「驚きすぎ。可愛いけど」

「可愛っ……⁉」

 もう無理。

 私の心臓が破裂する。

 そんなことを本気で思う私に、亜嵐くんはふはっと吹き出す。

「もう亜嵐くん、笑わないでよっ……!」

「いや、サラが可愛すぎるからさ。虐めすぎた? ごめんごめん」

「ううっ……」

 そうやって、ぽんぽん私の頭を撫でた。

 でも、より掛かることはやめてくれない。
< 7 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop