策略に堕ちた私
「俺、27だけど」
「またまたご冗談を」
「年上に見えるのは狙ってるからいいけど、山田さん、俺の年も知らなかったの?」
「社長には個人的興味はまったくありませんので」
「もしや下の名前も覚えてもらってない?」
「それくらいは知ってますよ。ひゅうが、ですよね」
「くっ」
社長ががっくりとうつむいた。
うつむいたままスーツの内ポケットから何やら取り出すので受け取ると免許証だ。
「瀬川日向」とある。
「読み方は、ひなた、だ。今年で27。山田さん、少しは俺に興味を持ってくれ」
もちろん「ひなた」ってことくらい知ってたけど、ちょっといじってみただけ。
なのに、そんなにむくれちゃう?
免許証で確かに27歳であることを確認して、私の口からは笑い声が漏れてきた。
「え、うそ、社長ってば、ホントに27? あははっ、あはははっ」
「ちょっと、笑いすぎ」
「私より年下じゃーん」
「くっ、この酔っ払いめ」
「へりくだってきて損したあ!」
「むしろ、へりくだってきたのはこっちだ!」
「わあ、良く見れば、社長の肌、きれいー、二十代の肌だあ。社長の顔なんか、まともに見る気もなかったけど、よく見たら、お肌つるつるー」
「あなた、つくづく俺に失礼だよね」
「社長、つるつるー」
「ちょ、山田さん」
「社長、つるつるー」
覚えているのはそこまでだった。
目を開けると、そこは知らない場所で、知らない顔が真横にあった。
「またまたご冗談を」
「年上に見えるのは狙ってるからいいけど、山田さん、俺の年も知らなかったの?」
「社長には個人的興味はまったくありませんので」
「もしや下の名前も覚えてもらってない?」
「それくらいは知ってますよ。ひゅうが、ですよね」
「くっ」
社長ががっくりとうつむいた。
うつむいたままスーツの内ポケットから何やら取り出すので受け取ると免許証だ。
「瀬川日向」とある。
「読み方は、ひなた、だ。今年で27。山田さん、少しは俺に興味を持ってくれ」
もちろん「ひなた」ってことくらい知ってたけど、ちょっといじってみただけ。
なのに、そんなにむくれちゃう?
免許証で確かに27歳であることを確認して、私の口からは笑い声が漏れてきた。
「え、うそ、社長ってば、ホントに27? あははっ、あはははっ」
「ちょっと、笑いすぎ」
「私より年下じゃーん」
「くっ、この酔っ払いめ」
「へりくだってきて損したあ!」
「むしろ、へりくだってきたのはこっちだ!」
「わあ、良く見れば、社長の肌、きれいー、二十代の肌だあ。社長の顔なんか、まともに見る気もなかったけど、よく見たら、お肌つるつるー」
「あなた、つくづく俺に失礼だよね」
「社長、つるつるー」
「ちょ、山田さん」
「社長、つるつるー」
覚えているのはそこまでだった。
目を開けると、そこは知らない場所で、知らない顔が真横にあった。