【完結】あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。

ご挨拶

 そこからはなぜかとんとん拍子に話が進んでいった。

 ライナルトさまが我が家にきて、これまでの経緯を話すと、お父さまもお母さまも呆れたように私に視線を向ける。

 そして、ライナルトさまのおうちにも挨拶に行った。

 ライナルトさまのお父さまとお母さまは私を歓迎してくれて、「息子に春が来るなんて……!」と涙を浮かべていた。彼はそんなおふたりを「はいはい」と適当にあしらっていて、家族に見せる表情を見られたことがとても嬉しい。

「それにしても、本当にうちの子で良かったの?」
「……わ、私は以前からライナルトさまのことが好きだったので……。ただ、私とライナルトさまでは、身分があまりにも違うので……ノイマイヤー侯爵夫人は、本当によろしいのですか……?」

 私は男爵家の令嬢。ライナルトさまは侯爵家の令息。

 本来なら、私が結婚できる方ではない。

 ノイマイヤー侯爵夫人は、そんな私に目を瞬かせ、それから小さく微笑みを浮かべてゆっくりと言葉を紡ぐ。

「この子ったら、縁談が来てものらりくらりと逃げてしまってね。……まぁ、数回お見合いには成功したのだけど、相手のご令嬢からやんわりと『怖いから無理ですごめんなさい』なんて返事ばかりもらっていたのよ。だから、驚いたの。まさかこの子から、『会ってほしい人がいる』なんて言われたときには!」
「母上……っ」
「本当のことじゃない。私はライの幸せを願っているわ。男爵家から嫁ぐということは、大変なことになるでしょう。ですが、ライも私たちも、あなたのことをしっかりと守るから、そこは安心してちょうだいね」

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