【完結】あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
「……ライナルトさまと、知り合えましたから……」

 そしてその流れで婚約することになったから。

 ……好きな人と婚約できるとは、夢には思わなかったもの。

 そのきっかけを与えてくださったのは、間違いなく殿下が勘違いしてくれたおかげだ。

「そうか。……そう言ってもらえるとありがたい。ライナルトをよろしく頼む」
「わたくしたち、幼馴染なの。弟のように思っているライナルトが、あなたのように彼を想ってくれる方と婚約できて、本当に嬉しく思っているのよ」

 ――おふたりはライナルトさまにとって、かけがえのない方々なのだろう。

 そしておふたりにとっても、ライナルトさまはかけがえのない方なのだと思う。

 良いな、そういう関係。

 利害だけの関係ではなく、きちんと固い絆で結ばれているだろう三人に、私が乱入しちゃうことになるけれど……

「おふたりの気持ち、しかと受け止めました。ライナルトさまと婚約できたこと、おふたりと話せたこと、とても嬉しく存じます」
「ああもうっ、可愛いッ。抱きついて良いかしら?」
「え、はい、どうぞ……?」

 ぷるぷると肩を震わせたナターリエさまが立ち上がり、私に近付いて鬼気迫る勢いで言われて、思わずうなずいてしまった。

 ぎゅっと抱きしめられて、うわぁ、良い香り! なんて思ったけれど、なに、この状況!?

「ライナルトの婚約者と言うことは、わたくしにとって妹同然! 仲良くしましょうね、レオノーレさま」

 身体を離してにっこりと笑うナターリエさまに、こくりとうなずいた。

 ……そんなナターリエさまを、殿下が慈愛に満ちた表情を浮かべながら見ていた。

 いやだからなに、この状況!?
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