【完結】あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
 私はライナルトさまの婚約者として、恥じない行動をしなくてはならない。

「……両親に聞いてみます」
「それならもう許可をいただいた。『レオノーレをよろしくお願いします』だそうだ」
「……お父さま、お母さま……」

 私が額に手を添えて項垂れると、ライナルトさまはそっと手を差し出す。

「というわけで、早速だが、家に行こう」
「えっ、今からですか!?」
「ああ、善は急げというからな」

 私がノイマイヤー侯爵邸に行くのが善? 不思議に思いつつも、差し出された手を握らないなんて選択肢、持っていないわ!

 彼の手を取ると、ライナルトさまはぐいっと私の手を引いて――ひょいと抱き上げた!

「ら、ライナルトさま!?」
「すまない、こっちのほうが早いから」

 そ、そうでしょうけども……!

 ライナルトさまの歩くスピードは、私よりも速いから。でも、一緒に歩いていると、合わせてくれるのよね……

 それにしても、そんなに急いで行かないとダメだったのかしら? ダメだわ、この距離、ドキドキして思考がまとまらない!

 馬車に乗せられて、ノイマイヤー侯爵邸へ。

 ノイマイヤー侯爵も侯爵夫人もすぐに出迎えてくれた。特に、侯爵夫人は嬉しそうだ。

「来てくれてありがとう。レオノーレ。一ヶ月、よろしくね」
「こ、こちらこそよろしくお願いいたします……!」
「ああ、そんなに緊張しないで。今日はゆっくり休んで、明日からがんばりましょうね」
「は、はい……!」

 侯爵夫人の優しいお言葉に、ちょっとだけ緊張が解けたみたい。

 結局その日は、四人で食事を摂って、私は……なぜかライナルトさまの隣の部屋に案内されて、休むことになった。

 そしてそれから一ヶ月のあいだ、侯爵夫人にビシビシと鍛えられるのだった……
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