【完結】あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
 パーティーに参加しても、壁の花と化していた私だから、ダンスを教えてくれた侯爵夫人も大変だったと思う。

 でも、侯爵夫人とがんばってきて本当に良かった!

 こうしてライナルトさまと踊れるのだもの!

 嬉しくて思わずにやけてしまう。

 なんと、一度もステップを間違えずに一曲踊りきることができた!

 私にしては快挙だわ!

 ぱちぱちぱち……と、どこからともなく拍手の音が聞こえた。

「見事なダンスだったぞ、ふたりとも」
「ありがとう存じます、ヴェルナー殿下」
「ありがとうございます」

 まさかこの場で、ヴェルナー殿下に話しかけられるとは思わなかった。そのあとは、ヴェルナー殿下とナターリエさまが踊り出す。その優美さに周囲の人たちの視線が集まる。

 そのことに、安堵してしまった。

 踊っている最中は気にならなかったけど、動きを止めた途端に浴びせされる視線の多さに、少し驚いてしまったから……

 きっと、ヴェルナー殿下は私たちのことを助けてくれたのね。

 それから、いろいろな貴族の方々に話しかけられて、なんとか当たり障りのない返答ができたんじゃないかなと思う。

 侯爵夫人に叩きこまれた貴族たちの情報が、とても役に立った。

 ありがとうございます、侯爵夫人!

 そうしてライナルトさまの婚約者としてのお披露目パーティーは、無事に幕を下ろしたのだった。
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