【完結】あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
 きっぱりと言い放つと、殿下は気分を害したかのように眉を(ひそ)めた。

 ……でも、いくら殿下でもライナルトさまのことを悪く言うのは、我慢ならない!

「……いや、だってあいつの顔は……」
「殿下。恋する乙女に愚問ですわよ」

 ナターリエさまがそんなことを口にする。

 やだ、恋する乙女だなんて! 間違ってはいないけれど!

「――俺のことが怖くないのか?」

 ライナルトさまに話しかけられちゃった!

 これはもしや、お話しするチャンスなのでは!?

 よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!

「はい、全然怖くありません! むしろ格好いいです!」

 ぐっと拳を握ってライナルトさまを見つめながら力説すると、彼はとっても驚いているようだった。

 そして、「格好いい……?」と怪訝そうな表情を浮かべながらも、自分の顔に触れる。

「……ライナルトの顔が、格好いい……だと……?」

 ヴェルナー殿下が理解不能とばかりに私を見た。

 確かにぱっと見の華やかさはヴェルナー殿下が上だ。キラキラとしたイケメンだから。

 でもね、ライナルトさまには、素朴な格好良さがあるのだ。

「あら、殿下。……顔だけとは言っておりませんわよ? ね?」

 ナターリエさまに問われて、こくこくとうなずいた。私がライナルトさまを格好いいと思った最初の出来事は、彼が戦っている姿を見たとき。

 そりゃあ、ライナルトさまの顔は目元がきつくつり上がっていて、怖い印象を与えるけれど、それはヴェルナー殿下を守るためでもある。
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