【完結】あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
 私は、ヴェルナー殿下を守るために彼が傷ついた場面を目撃したことがある。……その頃からだ。ライナルトさまのことを目で追うようになったのは。

「はい、ナターリエさま。ライナルトさまのことすべて、格好いいと思っておりますわ」
「まぁ、まぁまぁまぁっ! 嬉しいわ。そんなふうにライナルトを想ってくれているなんて!」

 なぜかナターリエさまがとても嬉しそうに声を弾ませた。

 私が困惑していると、ナターリエさまは私の手を取る。

「ライナルトはわたくしの従弟(いとこ)なの。こんなに大きくて不愛想な子だから、少し不安だったのだけれど……、きちんとライナルトを見てくれる令嬢がいて嬉しいわ! ほら、ライナルト! あなたもこっちへいらっしゃい!」

 ナターリエさまに言われて、渋々という感じでライナルトさまが近付いてきた。

 うわぁ、間近で見ると本当に背が高い!

「……ナターリエ嬢、困惑しているようだが……?」
「憧れの人が目の前にいるのですもの、当たり前ですわ」

 そっと手を離し、代わりに私の背中を押して、ナターリエさまは微笑んだ。

 ライナルトさまも困惑しているのがわかる。

 ……声も格好いいなぁ……!

「わたくしたちは大丈夫ですから、少しバルコニーで休憩なさって。ねぇ、ヴェルナー殿下?」
「あ、ああ。そうだな、護衛は他にもいるし……うん、行ってこい」
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