【完結】あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。

バルコニー

「そうか、きみだったのか。ありがとう」
「……あの、こう言ってはなんですが、使われたのですか……?」

 ライナルトさまはこくりとうなずいた。

「差し出されたのはクラウノヴィッツの薬だったからな。あそこの薬は品質が良いから、よく効くんだ」

 お父さま! うちの薬は品質が良いと評価されました!

「そういえば名前を聞いていなかった。名は?」
「レオノーレ・テレーゼ・クラウノヴィッツと申します」
「ああ、クラウノヴィッツ男爵令嬢だったのか」

 そしてうちの爵位まで知っていらっしゃる!

「クラウノヴィッツの薬は騎士団でもよく使っているからな。いつも助かっている」
「い、いいえっ、そんなっ! 役立っているのなら、なによりです!」

 柔らかい口調を聞いて、私の胸がドキドキと高鳴る。低めの声が耳に届いて、なんだか落ち着かない。

 それにしても、騎士団で使われていたとは……

「騎士団では怪我が絶えないからかな。薬を使い比べていたんだ。その中で、クラウノヴィッツの薬が一番よく効いた」
「そうだったのですね……!」

 うちがどうして潰れないのかが謎だったけど、騎士団からの注文を受けていていたからか……とはいえ、そんなに多くの注文は取れないのがネックではあるのだけど。
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