【完結】あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
 目元を細めて私を見るライナルトさま。

 勢いあまって『夫になってください』、なんて口にしてしまったけれど、彼に意中の方がいたらどうしよう……!

 ものすごく迷惑なことをしているわよね、私!

 あたふたとしていると、それに気付いたライナルトさまが首を傾げた。

「どうした?」
「いえ、あの、えっと。……わ、私の想いは、重くありませんか……?」
「……正直にいえば、女性に好意を寄せられたことがないから、わからない」

 ライナルトさまは困ったように眉を下げる。

 ……確かに、ライナルトさまの浮いた話なんて聞いたことがなかったけれど……まさか、本当に一度も女性から好意を寄せられたことがない!?

「……俺は、生まれつきこの顔なので、どちらかといえば疎まれることが多く……」
「そんな……とても凛々しくて格好いいのに……」
「そう言うのはきみだけだ」

 軽く肩をすくめてみせるライナルトさまに、首を傾げた。

 私にとってはライナルトさまが一番格好よく見えるのだけど……そりゃあ、最初にお会いしたときは怖そうな方だと思ったわ。ずっと警戒しているように目元を鋭くさせていたから。

 殿下の護衛中だから、余計にそう見えたのかもしれない。

 だけど、彼はただ怖いだけではないもの。

「……そんなわけで、結婚相手を探そうにも逃げられるばかりで、諦めていたのだが……」
「ら、ライナルトさまっ?」
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