愛されたい姫と愛したい総長。
ある日の放課後。私は1人教室で涙を溢していた。


「……七瀬さん、だよね」

「え……?」


理由はわからないけど、無性に泣きたくなることが増えた。


「どうしたの。悲しそうな顔して」


私でも知っていた。この人は冷徹無慈悲で有名な、佐伯雅さんだと。

噂によれば、白夜という名前のグループの総長だとか……。


「なんでも、ないです……」

「可愛い顔がぐちゃぐちゃだよ?まあ……そんな顔も、最高にかわいいけど」

「えっ……?」

「ううん忘れて。で、何があったの?」


なんでもないというのは、どうやらだめらしかった。

この人の優しい表情に心が打たれて、つい口を開いてしまった。


「私、気がついたらひとりぼっちになってて……それから、ずっと悲しくてたまらないんです」

「んー……じゃあ、俺に愛されてみよっか」


理由なんて聞かないでくれた。

ただ、手を差し伸べられて……その手を、取ってしまった。
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