始まりは愛のない契約でしたが、パパになった御曹司の愛に双子ごと捕まりました
プロローグ

満開の桜が咲き誇る緑道は一面ピンク色に染まり、晴れ渡った青空とのコントラストが美しい。

四月第一週の気持ちのいい春の日の朝、秋月萌は両手に二歳になったばかりの子供たちを連れて保育園へ向かっていた。

今月末に二十七歳を迎える萌は、セミロングの髪をチョコレートブラウンに染め、耳と同じ高さでひとつ結びにしている。

手入れを多少疎かにしても白くきめ細やかな肌は透明感があり、日焼け止めにパウダーをはたくだけのナチュラルメイクで出掛けられるのがありがたい。

身長は平均的な百六十センチ。細身ではあるものの、以前よりはかなり健康的な体形になった。

服装もメイクと同じくシンプルで、アイロンなしで着られる素材のオフホワイトのブラウスに、紺色のアンクル丈のテーパードパンツの組み合わせは、ほぼ毎日代わり映えしない。

双子の育児にかかりきりなため自分自身のことは後回しとなり、おしゃれに縁遠い萌だが、唯一ネックレスだけは毎日欠かさず身に着けている。

四つ葉をモチーフにしたデザインで、ホワイトゴールドとダイヤで形作られているネックレスは胸元で上品な輝きを放つ。

萌にとってこのネックレスはおしゃれをしたくて身に着けているというよりも、自分を奮い立たせるお守りのような存在だ。

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