始まりは愛のない契約でしたが、パパになった御曹司の愛に双子ごと捕まりました
晴臣が萌のためにと用意してくれた部屋は、本棚とデスクセット、ドレッサーにふたり掛けの小さなソファのみのシンプルなインテリア。ベッドがないのは、晴臣がどれだけ忙しくても寝室でふたりで眠りたいと譲らなかったからだ。
デスクに置かれたノートパソコンを開き、経費の不正使用について調べてみた。やはりそこには脱税や横領といった文字が並び、逮捕されるケースもあると書かれている。
さらには不正に気づいた場合の対処の仕方も掲載されていた。国税庁には課税や徴収漏れに関する情報提供窓口があり、プライバシーが守られたまま情報を提供できるようになっている。
(告発するってことだよね……)
秋月工業は父が誇りを持って大切にしていた会社で、今も多くはないが働いている従業員がいる。倒産してしまうかもしれないリスクを犯してまで告発すべきかどうか、萌は頭を抱えた。
さらに現在はまだ秋月工業は桐生自動車と取引があり、萌は晴臣と結婚する予定だ。もしも秋月工業の不正が明るみに出れば、どんな影響が出るのだろう。
取引先企業がそんな状況に陥るだけでも桐生自動車にとってマイナスな話なのに、それが将来会社を背負って立つ晴臣の妻の実家だと知られてしまえば、どれだけ迷惑がかかるのか想像もつかない。