美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く
4.思いがけない再会

あれから、何度も同じ夢を見た。

晴臣に出会い、救われ、愛を打ち明けられた場面を、繰り返し何度も何度も見た。萌の人生において間違いなく一番幸せな三ヶ月だった。

けれど、それに終止符を打ったのは自分自身。

『……わかった。君の意思を尊重する』

あの日、晴臣は力なくそう言った。

目が覚めて、隣に晴臣がいない朝に何度絶望しただろう。自分の決断が正しかったのか、単なる自己満足ではないのか、幾度も自分に問い掛けたけれど、今でも正解はわからないまま。

それでもなにも言わずに今日まで暮らしてきたのは、やはり彼に迷惑をかけたくないから。

晴臣と決別してまず萌がしたことは、東京を離れることだった。

勝手に桐生家との縁談を反故にしたあげく秋月工業を告発したとなると、叔父一家がどれだけ萌に対して怒りを抱くか、想像するだけでも恐ろしい。

できるだけ都心から離れようと考えて浮かんだのが、毎年年賀状のやり取りをしていた田辺雄介の存在だった。

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