美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

双子の妊娠が発覚したのは職場に迎え入れてもらった直後だった。田辺には迷惑をかけてしまったが、彼だけでなく妻の理恵もとても親身になってくれた。

しかし、そんな彼らにも双子の父親について話していない。

晴臣とは別れて以来一度も会っていないし、以前のスマホは解約したため連絡先も知らない。きっとニューヨークへ行き、任された大役を果たしているだろう。

そして、その隣には彼を支える妻が寄り添っているはずだ。

自分でその未来を選んだはずなのに、想像するだけで胸が張り裂けそうになる。だからこそ晴臣との思い出を心の奥底にしまい込もうとした。

それなのに、誕生日プレゼントのネックレスだけは肌身離さず身に着けているなんて矛盾していると思う。

本当は忘れたくても忘れられない。あの幸せな三ヶ月があったからこそ、萌はこうして大切な宝物を授かったのだ。

ネックレス同様、ふたごは萌の宝物。

誰にも憚らず愛情を注げる血の繋がった家族がほしいからと、晴臣に黙って勝手に生んだのは申し訳ないと思う。けれど光莉と陽太のおかげで、晴臣を失った心の穴が埋まらないままでも絶望に飲み込まれず笑顔でいられる。

父親に会わせてあげられないが、自分がその分惜しみない愛情を注いでみせると改めて胸に刻み、小さな手を握りしめたのだった。


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