美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

お風呂に入れるのもふたり同時は難しく、自分の着替えは後回し。ミルクを作って飲ませ、哺乳瓶を消毒したらまたおむつを替えて寝かしつけての繰り返し。萌は食事の時間どころか睡眠時間の確保も不可能で、細切れに寝たのを累計しても一日三時間もない。

双子は可愛いし、産むと決めたのは自分なのだから後悔はない。けれど、退院直後はこのまま生活するなんて無理だと頭を抱えていた。

そんな萌を助けてくれたのも田辺一家だった。

『ごめんね。お節介かなと思ってなかなか来られなかったんだけど、もっと早く助けてあげればよかったね』

晴臣のおかげでおどおどせずに自分の意見を言えるようになった萌だが、やはり誰かに頼るのは苦手で「助けて」のひと言が言い出せない。

それを見越してアパートに様子を見に来た理恵が育児や家事を手伝ってくれたおかげで睡眠時間を確保できたし、彼女と会話をすることで孤独を感じることもなかった。

双子がある程度大きくなると保育園に預けて働き出し、帰りに田辺家で夕食をご馳走になる機会が多くなった。そのため光莉と陽太も田辺や理恵、康平によく懐いている。特にふたりは〝たかいたかい〟したり、かけっこに付き合ったりしてくれる康平が大好きで、会うたびに「こーくん、あそぶ!」と抱きつくほどだ。

「そうだな。ちょっと前にやっと歩き出したかと思ったらもう走って喋ってるんだから、きっとすぐ大きくなるんだろうな」
「早く大きくなってほしいような、もう少しこのままでいてほしいような」

元気に成長してランドセルを背負う姿や制服姿を見てみたいと思う反面、とてとてした歩き方や、なにを言っているのかわからない謎の言葉など、この時期特有の可愛らしさをもうしばらく堪能したい気持ちもある。

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