美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

「萌」
「ん?」
「ずっと聞きたかったんだけど。光莉と陽太がもう少し成長したら、父親についてちゃんと話すのか?」

康介からの唐突な問いかけに、萌はハッとして彼を見た。

先月双子が二歳の誕生日を迎え、最近は理解力がついてきたため、萌もここ最近考えていたことだ。

「まだ、どう説明するべきか考えが纏まってなくて」
「父親は車を作ってるって話したんだってな。自動車メーカーに勤めてんの?」

先ほど桐生自動車の名前を聞いたばかりなのも相まって、心臓がドキンと嫌な音を立てる。

勤めているというより、企業を背負って立つ立場の人だ。けれどそれを口にする機会は今後一切ない。

萌が曖昧に微笑むと、康平はわざとらしく大きなため息をついた。

「悪い、言いたくないなら無理に聞かない。でも双子には知る権利はあると思うぞ。今どき片親の家庭は珍しくないとはいえ、父親の存在は知っておいた方がいいだろ」
「それは……」
「それか、萌が結婚してふたりに新しい父親を作るか」

じっと見つめる康平の眼差しにたじろぎつつ、萌は首を横に振った。

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