美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

あまり他人に関心を抱かない晴臣だが、ただ俯いて時間が過ぎるのを待っているだけの萌にももどかしさを感じ、姦しく話し続ける女性たちの声を遮って彼女に話しかけた。

萌の第一印象はおどおどしていて、瞳に生気がない女性だと感じた。

サイズの合っていないワンピースから伸びた手足は折れそうなほど細く、年頃の女性らしい曲線には縁遠い。

そして一番に目を引いたのが、彼女の雰囲気にまるでそぐわない髪色だ。

明らかに失敗したとわかる脱色具合で、元の黒髪と金髪がまだら模様になっていた。髪を下ろしていたら目立つと思い後ろでひとつに纏めたのだろうが、その隙のないひっつめ髪とまだらの金髪のアンバランスさが、さらに歪さを際立たせている。

ふたりで庭に出ようと誘うと、萌はようやく顔を上げた。

正面から見た彼女は顔色こそ悪いが、くりっとした黒目がちの瞳にすっと通った鼻筋が美しく、決して地味だと貶められるような容姿ではない。

むしろ最低限の化粧しかしていないであろう肌は透けるように白く、こちらを見つめる眼差しはハッとするほど印象的だった。

彼女を促して個室を出る際、秋月母娘の鋭い視線が萌を貫いているのも気付いていたが、敢えて無視を決め込んだ。その時にはもう、晴臣の決意は決まっていたから。

< 134 / 268 >

この作品をシェア

pagetop