美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

「田辺社長の息子さんと随分親しそうでしたし、これは前途多難ですね」
「小倉さん、面白がってませんか?」
「嫌ですね、副社長。桐生自動車の御曹司でイケメン、仕事もできてついに満を持して副社長就任。そんな完璧な男が目の前で意中の女性を別の男に掻っ攫われてるのを間近で見るなんて、滅多にできる経験じゃないですからね。面白いに決まってるじゃないですか」
「……もういいです」

これ以上話していてもからかわれ続けると判断した晴臣は口を噤み、背もたれに身体を預けて目を閉じた。そうすれば浮かんでくるのは当然、萌のことだ。

(三年前よりも綺麗になってたな)

服装やメイクは簡素で華やかさはないが、相変わらず肌は雪のように白く美しく、チョコレート色に染められた髪は艷があった。以前よりも女性らしさが増し、清楚で清廉な雰囲気を纏っているのに不思議な色気がある。

なによりも晴臣を見つめる瞳は吸い込まれそうなほど綺麗で、身動きが取れないほど魅入られた。

(萌、どうしても君を諦められそうにない)

右手の甲を額に当て、首を反らした。

運命的な偶然によって再会し、ぷつんと切れてしまいそうなほど細くとも繋がりが出来た今、萌を諦めるという選択肢はない。彼女が誰のものにもなっていないのなら、もう一度やり直したい。

今度は互いにメリットがあるなどという打算的な結婚ではない。ただ萌を愛しているから、彼女の夫という立場がほしいのだ。

晴臣は望みを繋いだ四つ葉のネックレスを思い出す。

あのネックレスをプレゼントした時に交わした約束を果たしたい。萌の両親に代わり、これからはずっと自分が誕生日を祝うのだ。

そのためには、まずはふたりだけで話をしなくては。

晴臣は額に乗せた手をグッと握りしめ、萌をもう一度抱きしめるために自分を奮い立たせた。





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