美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

田辺いわく、田辺ネジの製品を気に入った桐生自動車から共同開発を持ち掛けられているが、あまりにチャレンジングな要望で品質が担保できないと感じ、折り合いがつかなかったらしい。

ホッとしたのもつかの間、『どうしても諦められないから、また来ると言っていたよ。若いのに骨のある副社長さんだね』という田辺の発言を聞き、次はいつここに晴臣がやってくるのかと気もそぞろだった。

(晴臣さん、副社長に就任したんだ。いつ日本に帰ってきたんだろう)

気づけば、また彼のことを考えている。

あのあと、彼から貰ったネックレスをつけているのに気付いて慌てて外した。未練がましく毎日身に着けていると知られては、きっと不快に思われてしまう。それ以降、家のクローゼットに大切にしまったままだ。

それに目ざとく気付いた康平に「いつものネックレス、外したのか」と尋ねられたが、飽きてきたから外したのだとはぐらかした。まさかあのネックレスが、先週やって来た大企業の副社長からプレゼントされたものとは思いもしないはずだ。

康平には晴臣について、父親同士が親しい関係だった縁で知り合った人物とだけ伝えた。見合い相手であり双子の父親だと伝えていないだけで、決して嘘ではない。彼は眉間に皺を寄せて「ふぅん」と頷いただけだった。


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