美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く
集中しきれないながらもなんとかミスなく業務をこなし、終業時間を迎えた。
このあとは双子を保育園へ迎えに行き、スーパーに寄って夕飯の買い物をしなくてはならない。見るものすべてに興味津々の二歳児をふたり連れてスーパーに行くのは、仕事以上に体力がいる。
萌は竹内に「お先に失礼します」と声を掛けて事務所を出た。
廊下を渡り二重の自動ドアの前まで来ると、傘立てなどが置かれている風除室でひとり佇む男性の姿がある。
(晴臣さん……!)
先週からずっと頭から離れない彼が再び目の前に現れ、思わず声が出そうになる。
そんな萌の気配に気付いた晴臣は、顔を上げるとすぐにこちらへやって来た。逃げる間もなく対面することになってしまった萌は、ただその場に立ち尽くすしかできない。
「どうして……」
唐突な再会からまだ一週間も経っていない。近い内にまた来ると聞いていたものの、まさかこんなにすぐだとは思わなかった。
今日は田辺に商談の予定は入っていなかったし、周囲を見る限り秘書らしき男性の姿も見えない。そもそも晴臣はスーツ姿ではなく私服姿だ。ということは仕事で来たわけではないだろうと想像がつく。