美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

それに多忙な彼が電話ではなく、わざわざ時間を割いてやって来たのだ。過去に負い目がある萌には、とても突っぱねられなかった。

話を聞くだけ。余計なことを言わなければ、きっと大丈夫。そう自分に言い聞かせる。

「……わかりました。少し、だけなら」

萌が小さく頷くと、晴臣はホッとした表情で「ありがとう」と笑った。

「場所を変えようか。どこか話せるところはあるかな?」
「じゃあ、あの角を曲がったところにあるカフェでもいいですか?」
「もちろん」
「少し電話をしたいので先にお店に入っててください。すぐに行きます」

晴臣には先にカフェへ向かってもらい、萌は理恵に電話をかけた。陽太と光莉のお迎えをお願いするためだ。

残業しなくてはならない時や高熱や怪我など、萌がどうしても迎えに行けなくなった時のために、双子が通う保育園には萌だけじゃなく理恵も保護者として登録している。これまで頼んだ回数は数えるほどしかないが、今日ばかりは甘えさせてもらおうと思った。

「残業とか急病でもないのにお願いしてしまって、申し訳ないんですけど」
『やぁね、いつも言ってるじゃない。私は頼ってくれた方が嬉しんだから。陽太くんも光莉ちゃんも、もちろん萌ちゃんも、自分の孫とか娘みたいに思ってるのよ』

理恵が快く引き受けてくれたため、電話越しに何度も感謝を伝えてカフェへ急ぐ。

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