美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

口を閉ざした萌に、晴臣は真剣な眼差しで尋ねた。

「俺だよね?」
「あなたには関係ない。この子たちは俺の子だ」

晴臣の質問に答えたのは康平だった。

萌は思いも寄らない康平の返しに驚く。本当のことを言えずに困っているのは確かだが、別の男性を父親だと嘘をつく気はない。それに今後はビジネスパートナーになるかもしれない相手なのだ。彼らの間になぜかバチバチと火花が散るのが見えるが、すぐにバレる嘘をつくのはよくないのではと萌は焦った。

「あ、あの」
「見たところ二歳くらいかな。俺が萌と別れたのが約三年前……正確には二年と九ヶ月前だ。辻褄は合う」
「だからなんだって言うんですか」

混雑したカフェの奥まった席で、長身の男性ふたりが睨み合っている様は周囲の注目の的だ。しかしどれだけ視線を浴びようとも両者は一歩も引く気がないようで、じっと互いを見据えている。

「彼女は俺と別れてすぐに他の男との間に子供をつくるような女性じゃない」
「あなたにこの三年間の萌の行動をとやかく言う資格はないでしょう」

ピリピリした空気を敏感に察した光莉が、怯えながら萌にしがみついてきた。

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