美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く
「ママ、こーくん、こわいしてる?」
普段見ない康平の様子に驚いたのだろう。光莉につられ、陽太も反対側の手をぎゅっと握りしめている。
「ふたりともごめんね。大丈夫だよ、怒ってない。ママも康平くんもちょっと……大事なお話をしてただけ」
萌は慌ててその場にしゃがみ、両手でぎゅっとふたりを抱き寄せる。すると、康平をパパと呼ばない萌や双子に、晴臣が確信を得たように呟いた。
「ママと……〝パパ〟じゃないんだな」
そして彼は萌と同じように屈んで双子と視線を合わせると、いつもの穏やかな声で「驚かせてごめん。びっくりしたよね」と微笑んだ。
「名前を聞いてもいいかな?」
まさか双子に積極的に話しかけるとは思わず、萌は止めるタイミングを失ったまま、成り行きを見守るしかない。
人見知りな光莉は萌のうしろに隠れたが、活発な陽太は二本立てた指をぐいっと前に出して得意げに答える。
「よーた、にしゃい」
「ようたくんか。上手に言えてすごいな。教えてくれてありがとう。俺は桐生晴臣だよ」
褒められたのが嬉しかったのか、さらに陽太は光莉や萌を晴臣に紹介するように指をさしていく。