美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

晴臣と再会してからずっと悩み続けているが、まだこの問いかけに素直に頷いていいのかわからないでいる。すると、晴臣は萌と別れた後のことを話し出した。

「結婚の話を進める方向で同居していたから、両親は俺たちが破談になったと知ってすごく残念がっていたんだ。特に父はあの見合いでの様子を見て君の置かれた環境に驚いていたし、怒りを覚えていたから」

お見合いの席で会った晴臣の父を思い出す。一番末席に座っていた萌に対し、優しく話しかけてくれた。そんな彼を落胆させてしまい申し訳なく思っていると、晴臣はさらに萌の知らない話を続けた。

「だから俺が萌に振られたと知ると『なにをしてるんだ』って叱られたんだけど、さらに怒り心頭だったのが秋月社長夫妻でね。婚約破棄の慰謝料だなんだと連日連絡をしてきたり、やはり萌ではなく自分たちの娘を嫁がせると身上書を送ってきたりと、あの手この手でうちとの繋がりを持とうとしていたらしいんだ」

その頃にはもう晴臣は海外赴任へ飛び立っていたため、あとから宏一に聞いたのだという。

萌が叔父一家から離れてもなお迷惑をかけていたのだと知り、自分さえ離れればいいと考えた浅はかさに目眩がしそうだった。

「そんな顔をしないで。もちろん相手にしてないし、二年前に秋月工業との取引は完全に終了したんだ。俺たちももうほとんど関わりはないよ」

取引が終了したという晴臣の言葉にホッとしたのもつかの間、彼は探るような眼差しを向けてくる。

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