美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

「昨年の九月、秋月工業に税務調査が入ったんだ。そこで脱税が発覚して加算税が課され、経営は火の車となった。……知ってた?」

心臓がバクバクと嫌な音を立てている。晴臣の視線に耐えきれず、萌は顎を引いて俯いた。

「さらに製造工程で出た不良の検品を怠っていたらしくて、取引先数社から訴えが上がっている。倒産は時間の問題だろうね」
「え……?」

初めて聞く話に、萌は思わず顔を上げた。

晴臣はそれを見逃さず、畳み掛けるように言葉を続ける。

「萌、君は秋月社長の不正に気づいてたんじゃないか?」

図星を突かれ、ビクッと身体が跳ねた。

「君と再会して確信した。別れを切り出した理由は、本心じゃなかったんだって。いつかはわからないけど、君は会社の不正に気づいた。そして俺と結婚したら、君の実家である秋月工業がうちに不利益をもたらすかもしれないと危惧した。だから俺から離れた……違う?」

肯定も否定もできないまま、ただ唇を噛み締めて涙を堪えた。

その様子を見て、向かいのソファに座っていた晴臣が「やっぱりそうか……」と呟いて顔を覆う。絶望と苛立ちがないまぜになった声音に、萌は身を竦める。

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