美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

「萌?」
「ごめんなさい。迷惑を掛けたくなかったのに、結局叔父たちが晴臣さんのお父様にご迷惑を……」

晴臣はお見合い当初から言ってくれていた。いい夫婦になるために、なんでも言い合える関係でいようと。

にもかかわらず、萌は本心を隠したまま彼から離れた。晴臣の迷惑になりたくない。それ以上に、迷惑をかけて嫌われたくない。そんな自己保身にも近い思いから、身勝手に結婚の約束を反故にして彼の元を去った。逃げ出したのだ。

「私といては、きっとまた迷惑をかけてしまいます」

連絡先を変え、居場所を知られないように手続きはしたが不安は尽きない。

経費の不正使用の告発をしたのは間違いなく萌だとわかっているだろうし、晴臣の言う通り製造品の不良で他社から訴えられているのなら、彼らの怒りや鬱憤の矛先はすべて自分に向けられるに違いない。

その上、萌が晴臣と結婚したと彼らの耳に入れば、どんな手段で萌に報復しようとするか、考えるだけでも恐ろしい。

萌はやんわりと晴臣との復縁を拒絶したが、彼は頑として頷かなかった。

「みすみす君を手放してしまった過去の俺とは違う。それに、あんなに可愛い子たちがいるのなら、なおさら君たちを守らせてほしい」
「晴臣さん……」
「子供たちの父親は、俺だよね」

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