始まりは愛のない契約でしたが、パパになった御曹司の愛に双子ごと捕まりました
7.家族になりたい
「光莉、陽太とお揃いのシャツ着るんじゃなかったの?」
「やだの! わんぴしゅ!」
「わかった、じゃあワンピース出すから待ってて。陽太はそのズボン泥だらけだから脱いでね」
「あい」
「あっ、そこで脱がないで洗面所に行って!」
四月中旬の土曜日。今日は晴臣と萌、そして双子の四人で出掛ける予定だが、朝から近所の公園へ行って泥だらけで帰ってきたため、まだ双子の準備が終わっていない。
晴臣が萌の暮らすアパートに迎えに来ると約束した時間まであと二十分ほど。ゆとりを持って公園から帰ってきたはずが、帰り道で陽太が水たまりで転んだり、光莉が急に違う服に着替えたいと言い出したりと、いつものこととはいえ慌ただしい。
「ママ、わんぴしゅ、ぴんくのね」
「はい、どうぞ。手をこっちに入れて」
「んーん! ひかり、しゅる」
「よーたも、じゅぼん! しゅる!」
ふたりは二歳を過ぎた頃からなんでも自分でしたがるようになった。自我が芽生えて成長している証なので見守ってやりたいが、急いでいる時はつい手を出したくなってしまう。
「ママ手伝おうか?」
「やーの! ママ、め!」
拒絶する言葉もふたりで声を揃えて言われると、つい可愛くて頬が緩む。