美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

家族になりたいと改めて告げてくれた彼に対し、萌はまだなにも答えを返していない。自分自身が宙ぶらりんな気持ちのまま、双子に父親についての説明などできそうになかった。

晴臣にも正直にそう伝えると【もちろん萌の意見を尊重するよ】と返事が来た。急かさない彼の優しさに甘えている自覚はあるが、だからこそ気負いすぎずに四人で出かけられる気がする。

「うん、うさぎさんの髪型ね。してあげるから、ゴムを準備できる?」
「できるー」
「じゃあふたりとも、向こうで待っててね」
「はーい」

声を揃えて部屋へ戻っていくふたりに視線を向けていると、康平が「ひとつ聞いていいか」と萌を見据えた。

「萌がつけてたネックレス。あれって桐生さんからのプレゼントか?」

肌身離さず身につけていた四つ葉のネックレス。両親の墓前で誕生日を祝ってくれた彼の優しさが、ずっと萌を支え続けていた。突然再会してからずっと外しているネックレスは、今も大切にクローゼットにしまってある。

「うん」
「そうか。元々俺の出る幕はなかったってことか」

頷きながら呟いた声は小さくてよく聞こえない。しかし聞き返す前に、康平が続けて口を開いた。

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